負担付き遺言書の書き方

遺言で財産を贈与することを遺贈といいます。

負担付き遺贈とは?

財産を遺贈する代わりに、遺贈を受ける人に何らかの義務を負担させる遺言が負担付き遺贈です。たとえば、障がいがある次男の養育を長男や親の会(法人)にしてもらう代わりに、長男や親の会(法人)に財産を遺贈する場合などです。負担付き遺贈を受けた人や法人は、遺贈の価額を超えない限度で、負担した義務を履行する責任を負います(民法1002条1項)。

遺贈する財産の価額以上の負担を強制させることはできません。遺贈は契約ではなく、遺言を書いた人が一方的にすることなのに、遺贈する財産の価額以上の負担を受遺者(遺贈を受ける人)に課すのは不条理だからです。

受遺者は、遺言を書いた人が亡くなった後いつでも遺贈を放棄することができます(民法986条)。これは負担付き遺贈も同じです。負担付き遺贈を放棄すると、受遺者は財産を取得しませんし、負担を履行する義務もありません。そのため、あまりに無理な負担を強いる負担付き遺贈をすると、放棄されて遺言の意味がなくなってしまうことがあるので注意が必要です。

負担付き遺贈の注意点

負担付き遺贈については次のような注意点があります。

  • 負担付き遺贈は放棄が可能
  • 民法で定める方式に従って作成しないと無効になる
  • 受遺者が負担を履行しない場合にトラブルになる可能性がある

負担付き遺贈は放棄が可能

受遺者は、負担付き遺贈を放棄することが可能です。受遺者としては、面倒な負担を履行するくらいなら遺贈はいらないという場合、放棄されてしまう可能性があります。なので、できれば受遺者が負担付き遺贈を承諾するかどうかの意思を確認しておいた方がいいでしょう。

民法で定める方式に従って作成しないと無効になる

遺言は、民法で定める方式通りに作らないと無効になってしまいます。自筆証書遺言(自分で手書きで書く遺言)の場合は、次の点を守らないといけません。    

  1. 本文を手書きで書く
  2. 日付を書く(手書き)
  3. 氏名を書く(手書き)
  4. 印鑑を押す

出来上がった遺言書は、封筒に入れ、コピーを取ったうえ、受遺者に渡しておき、コピーは相続人にも渡して了解を取っておきましょう。

受遺者が負担を履行しない場合にトラブルになる可能性がある

負担付き遺贈は、負担を履行する場合に財産を遺贈する遺言です。しかし、負担が履行されなくても遺贈は当然には無効になりません。もし、受遺者が負担を履行しない場合、遺言者の相続人は、期間を定めて負担を履行するように催告をすることができます。

その期間内に負担の履行がないときは、その負担付遺贈についての遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができます(民法1027条)。しかし、遺言を取り消されない限り、負担は履行されず、遺贈だけが有効になってしまいます。そのため、負担付き遺贈をする場合は、遺贈を受ける人と負担の内容を慎重に検討する必要があります。

遺言書を変更したい場合

新しい日付の遺言書を書くことで、古い日付の遺言書は無効になります。負担義務を負う受遺者(遺贈する相手)に、負担能力がないと思われるときには、新しい日付の遺言書を書くことで、前の遺言書は無効になり、財産は新しい遺言書で指定した人が相続することになります。

まとめ

遺言は、何度でも作り直すことができますので、あまり慎重になりすぎる必要はないかと思います。毎年、遺言書を見直す習慣にしておきたいものです。