ピアサポート仲よしを立ち上げた3つの理由
経済的負担を抑えた親なき後の財産管理
私たちはこれまで、「社会福祉法人岡山市手をつなぐ育成会」で、障がい児・者が住み慣れた地域で安心して豊かに暮らせる社会の実現を目指して活動してきました。現在、およそ170名の方が「就労支援」「地域活動相談支援」「共同生活支援」「居宅介護支援」などのサービスを利用されています。
しかし、利用者も親も高齢になっている現在、親が亡くなった後、一人残された子ども達がどうやって暮らしていくのか、一人で判断ができない子ども達を誰が支えてくれるのかなど、心配が尽きません。
グループホームでの職員による支援には、親が子どもに残した財産の管理や銀行の通帳管理、また長期療養が必要な病気になった場合の支援などは含まれていません。また、グループホームは一生涯の住まいではないため、住み替えの手続きなどの支援も必要になります。
これらの実情を受け、私たちは、子ども達が一生涯にわたり安心して暮らせる仕組みを作る必要を強く感じるようになりました。その1つの解決策の制度に、2000年に導入された「成年後見制度」がありますが、以下の点で知的障がい者には使いづらい制度です。
- 後見人は裁判所が決めるため、希望する人や団体を選べません
- 一度契約したら中途解約はできません
- 月々の経済的負担が大きい(月2~3万円以上必要です)
- 生活面の見守りに重点が置かれていません
知的障がい者にとっては利用する年数が長いことから、上記3、4の項目が大きな問題です。私たちは「社会福祉法人手をつなぐ育成会」等と連携して、上記の項目に対応する方策を探ってきました。
その結果、永続性を持つ一般社団法人などが任意後見の受け皿になることで解決の方向が見い出せるとの結論に達し、2023年6月に立ち上げたのが「一般社団法人ピアサポート仲よし」です。「社会福祉法人 手をつなぐ育成会」の利用者のみならず、同じ不安を抱える人ならどなたでも入会できます。入会するとピア会員(会費:月額1,000円)となり、実際の支援が始まる時からサポート会員(会費:月額5,000円)になります。
ピア会員は、一般社団法人ピアサポート仲よしによる、財産管理委任契約、任意後見契約、死後事務委任契約、負担付き遺贈遺言書などの作成支援が受けられます。
公正証書として作成した契約書により、その発効を申し出たときからサポート会員になり、実際に支援が始まっても、財産管理委任契約(日常の金銭管理)などを優先的に利用することで、任意後見の発効はできるだけ遅らせたいと考えています。任意後見の発効後は成年後見制度利用の半額ほどですが負担が発生しますので、できるだけ本人の負担を軽減するためです。
親の立場に立った安心・安全なサポート
必要とするサポートは個々によって様々ですが、一般社団法人ピアサポート仲よしでは、指図書(本人の生活全般に係る情報を詳細に記した意向書)を作成することで、本人の基本情報をスタッフが共有する中で具体的な支援に活用していきます。
ピア会員の時は、月1回の現況確認やスポット支援(病院の同伴等緊急で公的支援の及ばない時の支援。実費負担が必要です。)でサポートします。
またサポート会員になり実際の支援が始まってからは月1回の定期的訪問(担当者・副担当者を決めます)を行うことで、困りごとや健康状態の変化などの把握に努めサポートします。個々のライフステージに沿ったきめ細かい上質なサポートの提供を目指します。
老後の安心生活をサポート
老後の生活や金銭面での不安は、財産管理委任契約、任意後見契約、死後事務委任契約等を一般社団法人ピアサポート仲よしとの間で結ぶことや、負担付き遺贈遺言書を作成することで、解消されます。
「契約を結ぶこと」と「契約が発効すること」とは違います。
自分で意思表示ができる時から、老後の生活に備えて、上記のような準備をしておき、一人暮らしが困難な状態になったり、意思表示が難しくなったりした時の生活を一般社団法人ピアサポート仲よしが支えます。
サポート内容
ピアサポート仲よしは、経済的負担を最小限に抑え、親なき後や老後の不安に対し安心して生活を続けられるサポートを提供します。
ピア会員とサポート会員の2つの会員があります。
ピア会員になると
月額1,000円の会費で、以下のサポートを受けることができます。
月1回の現況確認(電話やメール)
電話・メール等で安否の確認を行い、ご要望などに対応します。
スポット支援(公的支援の及ばない場合等:別途実費要)
病院の同伴等、本人や家族の急な入院、診療付添いなどで、ヘルパーさん等の公的支援が間に合わないとき、実費が必要ですが、できる限り対応します。
講演会・勉強会への無料参加
一般社団法人ピアサポート仲よしの勉強会や講演会への無料参加ができます。令和6年度の計画は、
- 岡山公証センターの公証人さんの講演ー6月8日(土)開催
- 障がい者も高齢者も利用できるグループホームについての講演会ー7月6日(土)開催予定
- グループホームの研究会を続け、いずれは建設を計画
- 遺言書作成ワークショップなど、盛り沢山です
指図書(支援者に向けて、あらかじめ本人の情報や要望を書いておくもの)作成のお手伝い
ピアサポート仲よしオリジナルの指図書(本人の生活支援に係る情報・要望を詳細に記した意向書)のひな形を作成しました。ホームページに掲載していますので、ダウンロードして記入していただき、ご意見をお寄せください。指図書記入のお手伝いもします。
困りごとの無料相談
今寄せられている相談は、
- 遺言書の作成
- 任意後見契約のメリット・デメリット
- 終生利用できるようなグループホームが欲し
などです。
必要な契約書(財産管理委任契約、任意後見契約、死後事務委任契約、負担付き遺言書等)の作成の手伝い(専門家に依頼する場合は実費)
現在、公正証書契約を作成しピアサポート仲よしと契約を結んだ方は4名、月1名以上の割合で契約が進んでいます。すでに障害のある子どもの金銭管理が負担になって来た80歳を超えた両親が、財産管理委任契約を発効させて、サポート会員に移行しようとします。
自分は大丈夫なのでは?という期待もあって、なかなか財産管理委任契約・任意後見契約を結ぶ一歩が踏み出せないものですが、契約を結んでおけば、発効するまではこれまで通りの生活を続ける自由と何かあった時の安心を手に入れることができます。また、契約はいつでも解除できるので不安もありません。
財産管理委任契約を結ぶことで、委任開始を申し出ればいつでも預金管理をしてもらえる(サポート会員になれる)という安心をてにできる
契約を結んでも、委任開始はしないですますことが可能です。
任意後見契約を結ぶことで、認知症になっても財産管理・見守りをしてもらえる(サポート会員になれる)という安心を手にできる
意思表示能力があると認められた知的障がい者の場合は、障がいがあっても契約をすることができます。また、いつでも財産管理委任契約だけを発行させて金銭管理と見守りをしてもらう(サポート会員になる)ことが可能になります。
サポート会員になると
契約が発効して実際に支援が始まると、月額5,000円の会費でサポート会員となり、新たに以下のサポートを受けることができます。
財産管理委任契約開始の申出により、希望する預金等の管理
財産管理委任契約を開始したいと申し出れば、本人が希望する預金等の管理、財産管理支援(日常の金銭管理を含む)が始まります。ピアサポート仲よしに管理してもらいたい預金(全財産の管理でなくて可)の管理をたのむことができ、その時点から会費5,000円のサポート会員として、ピアサポート仲よしからのサポートを、指図書通りに受けることができます。財産管理委任契約はいつでも解約できます。
月1回の定期的訪問(2人体制、1時間)で、本人の現況確認、ニーズへの対応(訪問時間内無料)
5,000円の会費の範囲で、毎月2人体制で1時間の訪問をします。現況を確認し、ご本人の要望などに対応します。
入院、手術など病気への対応
指図書に書かれた内容に添った支援を行います。必要な支援実費は本人の預り金から(任意後見契約が発効してない場合は本人の同意のもとで)支払われます。医療同意などを求められた時も指図書を提示することで対応できます。
任意後見契約により、認知症になってからの財産管理と指図書に添った見守り支援
本人に、後見人が必要な状態になった時に、ピアサポート仲よしは、家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てを行います。任意後見監督人の監督のもとに、任意後見人として、財産の管理・生活の見守りの後見を始めます。任意後見監督人の報酬は、裁判所が決定します。それまでは自由に契約を解除できます。サポートをするにあたっては、指図書に書かれた内容に沿った支援を行います。
契約ができない本人の場合、親等からの負担付き遺贈された財産の管理による、指図書に添った見守り支援
契約能力が不足しているとみなされる重度の知的障がい者にとっての、親なき後のお金の管理や生活の見守りは、親が負担付き遺言書を作成し、ピアサポート仲よしに必要な財産を遺贈し、財産がピアサポート仲よしにより保全されることでおこなわれます。この場合も指図書に従った金銭管理・見守りが行われます。
死後委任契約で指図書に添った死後の葬式の管理
葬儀・埋葬・残余財産の処分等も、契約と指図書に添って行われます。